動く壁画

爽やかな5月をまだまだ堪能したいのに、真夏のような
暑さがやってきた。暑さに慣れていない体にボディブローの
ようにじわりじわりと効いてくる。

「今年はアブラムシが異常に多い。
いくら消毒しても新芽をすぐにアブラムシが食べにくる。
今年は猛暑になるかもしれんなぁ。。」
近所の農家の方と交わした会話がふとよぎった。
長年の勘というのは大抵、当たってしまうものだ。

さて、日差しが強くなれば、落とす影も濃くなる。
うだるような暑さにまいっている私を尻目に

観察隊1号は「お、今日はいい影絵ができるぞ」と
嬉々としている。

我が家には絵も写真も飾られていない白い壁がある。
いつか好きな絵に出会ったら、飾りたいとは思っているのだが
まだそのままでいる。
そんな壁はただ黙って影絵のステージの役をかってくれている。

風になびく庭木の影。
夕日に照らされたダイニングテーブルの影。
時間のよっていろんな場所に出没する影を観察隊員らは
楽しんでいる。

「壁に窓が出来てるよ!」

動く壁画。
私も観察隊に影響されてか、風に揺れる庭木の影に

見入ることが多くなった。
家を建てるときは壁に映る影のことなど考えてはいなかったが、
これは嬉しい副産物。私は水墨画のような影絵が気に入っている。

今は絵を飾るよりも季節によって濃淡を変え、
時間帯によって映し出す場所を変化させる

影絵の方が我が家らしい気もする。

建物と庭は一体で考える。
内と外をつなぐ影を眺めながらそんなことを考えた。